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永遠の0

昨年のXmasに(笑)、ひとりで観に行った永遠の0の感想を少しだけ。
以下ネタばれしてますし、映画から外れたブイとも関係のない話もしています。
感想はひとそれぞれ、という前提でどうぞ。










過去と現在の構成が巧みで観やすく、かといって流れがダレるようなこともなくよく作られた映画でした。結末も徐々に、ああ…そういうことか…と推察が出来て、ここも上手いもって行き方だったな。
原作を読んでいませんが、映画はエピソードを宮部に絞ったと聞いたので、監督がうまくまとめられたのかなという感想です。
キャストも豪華で、戦時の若い兵士役の皆さん熱演でしたね。過去の新井くんと現在の田中泯さんが迫力あって似てないのに似て見えてよかったなー。勿論他の役者さんも力を出されていて、ひとりとして遜色のない大変面白く巧い映画でした。
岡田のことは岡田としてどうしても見てしまうんだけど…

岡田はこれだけ打ち込めるのも才能だと思うし人物を体現しようという気迫が全面に伝わってきて、すごかった。

…と、ツイッターにも書いたように、彼の力は確かに映画の力になっていたと感じられたので、すごい子だと素直に思えました。


泣けると聞いて観に行ったし泣く気も満々だったんですが、全部観終わっても泣きませんでした。この映画がフィクションであれば、戦争の哀しさや人間模様の機微に、すごく号泣したんじゃないかな。
でも泣けなかった。
特攻の悲惨さも勿論描かれていたのだけれど、私には宮部という悲劇の英雄を描く物語が、どうしても悲惨さを上回って見えてしまい、実際の太平洋戦争を題材にしている物語として、そこがひっかかってしまった。
そうだな…私はこの映画を観て、すっきりしてしまったんです。
大石の正体を知ったすっきりさとは別の、実際の戦争*1の憎しみや悲しみにカタルシスを感じてしまった。
フィクションならいいんです。そっちはむしろすっきりしたいのよ!
でも、実際あった戦争を描く映画で、気持ちが浄化されるようにすっきりしてはいけないんだなぁ…と漠然と涙腺のブレーキが働いたのです。
別に右でも左でもないんだけどねー嫌だったんですよね、たぶん生理的な感覚で。


あと、ホント余計なお世話ですが…。
アクションを武器にしているから仕方がないかもしれないけれど、最近の岡田はSPからこっち現実に即した設定*2での「体制の側に居て彼の強さを武器に戦う役」が多いでしょう。岡田自身が思想家役ではないにしても、映画自体に戦争の意義を含んだものも多い。
それが、「誰か何かを守る為」という英雄物語の伝家の宝刀を持ったものであっても。
体制側を全面的に善と描いている訳ではないし、むしろその体制に懐疑的であったり、主役が苦悩してることも多いのだけれど、結局は主人公=岡田=体制勢力が英雄的「強さ」でもって敵に勝つというパターンが続くので…何かね…じわじわと、プロパガンダに利用されていないか?と思い始めてしまってね。
また今回の0では体制側(日本)は負けるんだけど、主人公の宮部の死は自己犠牲として描かれてもいるので、そこもひっかかった。申し訳ないけど、感動より先にひっかかったよ。宮部はむしろ楽になりたかったからこその身代わりという解釈も多分にあると思うので、単純な自己犠牲ではないのだけれど…でも「自己犠牲」を後ろ側からじわりと肯定はしてるよね。
そんなことを思っちゃう世相なのか、私が考え過ぎなのかね。
岡田自身にそういう思想はないと思うので、そこは心配していないのですが。
娯楽に絡めて何か考え方を誘導されている気がして、なんだか居心地が悪いんだよね。これは岡田がかかわった作品に限ったことではなく、最近のエンタメはそんな感じが強い。
銃で拳で戦うのは、フィクションだから楽しい面白く観られる。それが伝わるように描かれているかな、とか。殴られて撃たれて、痛そうには描かれている。でもその痛みを精神面が凌駕して、何がしかの為に自分を捨ててでも戦える、それが強さであると。
それを実際の戦争にトレースした上でみんなが肯定していることが、なんだかとっても不安。
私も含め日本人の大多数が体験もしてない「戦争」はほとんどフィクションに近い感覚しかないけれど、それでも作り物と歴史は違わなくてはいけないはずです。


再度言いますが、永遠の0はとても面白かったです。
天地明察からかな、岡田の映画*3を結構ちゃんと観ているんですが、力もついてるし後はほんと滑舌だけだよ!と思って今後も楽しみです。
楽しみなんだけど、永遠の0を観て、私が感じたことは岡田のあれそれよりも、以上のような薄気味悪さだった。それはメモっておきたい。

*1:宮部やそれを取り巻く人々はフィクションと承知していても。

*2:もしくは近しい設定。

*3:その前は花よりもなほまでさかのぼる。